日タイロングステイ交流協会便り(2022年3月)
2022年03月23日(水)
昆虫食 Edible Insects : パワーフードの源
―― すべての人のための持続可能な蛋白資源として
(2022 年 1 月 10 日 タイ王国大使館 セミナー表題)
例年 この時期は当協会が主催の名古屋・日泰寺のビジネス・ロングステイセミナーやロングステイ財団総会の内容などを発信。またインバウンドEXPOやFOODEX JAPANの特記事項も掲載。本年はコロナ禍で行事中止が多いので、「タイ王国大使館、日本アセアンセンター、JTECS、日本タイ協会、日本国内大学、泰日工業大学など」のオンラインセミナーで極力情報収をしました。
その中で 表題のタイ王国大使館のセミナーは 駐日タイ王国大使も参加し、力の入った異色のテーマで、世界的食料問題でもあるので、データや資料を加え、個人的体験・関心を含めご報告します。
1.日本・タイ・ラオスの昆虫食体験
日本でも遺跡・貝塚などからで広く昆虫食生活があったが、最近は地域伝統食中心である。長野県北部の村出身(戸籍)の私は「幼児の時に、蜂の卵・幼虫や蚕などを食べた思い出がある。30歳代長野県担当営業時代は、居酒屋で ザザムシ・コウロギ・バッタを美味しく頂いた。
タイ赴任時 北部・東北部でのディーラー巡回ではレストランやディ-ラーのご自宅でも食用昆虫がよく出てきた。
JCC電気部会長として参加したラオス電気産業視察では、水力発電のタイ国への売電状況(国境両岸・川中の巨大送電システム)に感動。 一方 多様な目的(生活食料・健康サプリ・薬品など)を持つ豊富な昆虫食にも感心した。
* 最近ラオスの1/3の子供の栄養不良(脂質・ミネラル・ビタミン不足)の対策として、成分・味が好適で、家庭で短期間に成長するヤシオオサゾウムシの養殖が盛んとの報道有。
タイ北部チェンマイ周辺は 世界のロングステイヤーが集まる地域であるが、多種多様な昆虫食は外国人(日本人にも)に注目され、昆虫食レストランも人気がある。
* 一方 大手食品スーパーでは無農薬・オーガニック食品が陳列され、日本人には清潔・無菌の「生卵」かけご飯も訴求している。
2.「昆虫食 Edible Insects: パワーフードの源。すべての人のための持続可能な蛋白資源として」 (1月10日 タイ王国大使館開催 オンラインセミナー)
● シントーン大使
2013年 FAO国連食糧農業機関の *EDIBLE INSECTS 報告のインパクトは大きい。世界の26億人が昆虫食を体験。 タイ王国は世界の台所として昆虫食を推奨する。
* FAO : 人口増。食料(蛋白資源)不足。 動物蛋白の供給(生産)は広大な土地施設・大量の餌や水・労働力・長期間が必要でコストもが高い。さらに環境問題の制限が厳しい。 この重要課題に対する有効な解決方法が「昆虫食」である。
● タイ農業協同組合大臣・顧問 Mr.ポ ンラプット
タイ王国 2019 年食品輸出は世界 12 位(アジア2位)。世界の昆虫食のハブになる。昆虫食は高蛋白。昆虫養殖は低コスト・タイ気候に好適。2018 年以来 高成長。28千以上の農家が194種。食品規格(コウロギなど)も設定。 EU やメキシコと輸出合意。
● 昆虫食普及ネットワーク 内山理事長
人類は昆虫を日常食にしていた。 最近の日本は地域伝統文化となっている。(長野県:蟻の子、ザザムシ、蚕、イナゴ、カマキリの卵など)。
12月~5月 アリ、クワガタ、コメツキムシ、トンボ、カワゲラ、カミキリムシ
6月~11月 蝶、蛾、カメムシ、スズメバチ、イモムシ、コウロギ、蝉(幼虫)、バッタ、イナゴ
タイ王国は世界最大の昆虫食国。タイ人は 100%が昆虫食経験、日本人は 47%。バンコクではパン(コウロギ)、バーガー(蚕)、ラーメン(コウロギ)、煎餅・菓子の材料。 日本食好きなタイ人は寿司ネタにも。
● 在ローマ FAO タイ政府代表 タナワット公使
食用昆虫は 世界の人々への持続的蛋白質の供給源となる。タイ王国は今後 お米・畜産品に加えて養殖昆虫(新鮮・安全・高品質)を供給する。
● 生産量(アウトプット)1kg当たりの 牛畜産とコオロギ養殖の比較
水 量 14515リットル 対 198リットル 77分の1
餌 量 10kg 対 1.7kg 5分の1
温室効果ガス排出 2850g 対 1.6g 1780分の1
3.FODEX JAPAN2022( 幕張メッセ・3/8~3/11) に昆虫食出展
本年は新たに代替食品・新食材のゾーンを設置。 昆虫食も展示された。ブースは タイ関連団体であり、主に cricket (コウロギ) を取扱う。
① The Bricket 社(タイ企業) 生産は バンコク近郊
② FUTURENAUT 社 群馬県 高崎経済大学内
食用昆虫コウロギの開発・輸入・販売 タイ企業と提携し、コウロギ・チョコ、コウロギ・ゴーフレットを販売。ドイツで食用昆虫の研究発表。
4.今後の日本の取り組み
欧米をはじめ世界諸国は 昆虫食の研究開発・生産販売では先行している。
食料自給率が低い日本も遅ればせながら政府・大学・民間の研究開発が盛んになった。
日本政府の未来プロジェクト 「ムーンショット」プロジェクトに織り込む。
メリット
食料自給率アップ、 食品廃棄ロス減、
小規模投資(土地・施設・機器)、軽労働、短生産期間、保管輸送
問題点
昆虫食忌避感(特に見た目)、安全・品質規格、表示(法令)、アレルギー対策
大学・研究所の研究開発事例
東京農業工大 コオロギ(雑食)の生産(生産性・効率)、餌の研究
徳島大学 昆虫食のアレルゲン解消研究、コウロギ製品販売支援
水産技術研究所 養殖魚類への有効・低廉な餌の研究・実験

以 上
引き続き 日タイ ロングステイ交流協会へのご協力ご支援をお願い致します。
日タイ ロングステイ交流協会
理事 事務局長 上東野幸男