日タイロングステイ交流協会便り(2020年3月)
2020年02月25日(火)
タイランドの高齢化状況(健康・医療・介護)について ―外国人滞在者にも関連してタイランドの急速な少子・高齢状況―
「高齢者」は多くの国では65歳以上としており、人口の7%になると「高齢化 Aging 社会」、14%では「高齢 Aged 社会」、21%では「超高齢社会」と定義しています 。日本は既に25%を超えており、「重老齢社会」とも言われます。
1.タイランドは60歳以上を高齢者としており、10%の2005年から高齢化社会、20%超見込の2021年に高齢社会 、2031年(28%超)に超高齢社会としている
人数は1990年約400万人(7.4%)、2017年約1100万人(17.1%)。また独り暮らし高齢者が増加して10.8% 2017 年) です 。
なお、地域別で東北が最多の約357万人、比率では北部が最高の211%です 。
このような状況から 高齢者 医療、福祉関連の 政策 は 特に重要になっています。
タイランド4 0のターゲット 業種には 「医療・健康ツ―リズム」や「医療ハブになる産業」が掲示されています。
2.外国人への対応
メディカルツ―リズムを標榜しているタイランドはさまざまな施策を展開してきました。外国人長期滞在には安全・気候・国民性・安全などに加えて、医療介護が重視されます。外国人診療は年間約250万人でアジアのトップでインドやシンガポ―ルを大きく凌いでいます。これを支えているのは米国JCI(Joint Commission International)認定の大手私立病院であり、タイランド各地に60以上の病院があります。日本もインバウンドを意識して最近JCI認定病院が増えたが未だ16病院です。
*バンコクの有名病院(バムルンラード、バンコク、サミティベート、BNH)などはJCI認定を取得している。
ただ医師や看護師の人員(人口当たり)は日本の六分の一程度 、しかもバンコク偏在です。タイ国民の忍耐・犠牲により外国人医療サービスが成り立ってると思われるので在留邦人8万人の日本は特に草の根医療面での支援・協力を行うべきです。
一方、緩やかな医療規制とスマホ急増(普及率が120%)を活用する「遠隔医療」が期待できます。チェンマイやバンコクの日本人長期滞在者がスマホ等で日々医療データを現地病院に送って健康管理をするシステムを日本の大学や企業が実施しています。さらに次世代通信規格5Gにより、インターネット診療がタイ全体への普及拡大が期待されます。
ビザについては外国人のロングステイ(OA)ビザ(1年、10年)、年金(O)ビザ(90日)の発給は年々増加し(2012年約40千人から)2018年約80千人になっています。2014~2018年の5年間では約350千人にビザを発給しており、国別(2018年)では 英・米・独・中国・豪の順位で日本は8位です。
外国人全体の人気県順位は チョンブリ(パタヤ)、バンコク、チェンマイ、プラチュアップキリカン(ホアヒン)、プーケットで7割を占め、日本人とは多少異なります。
タイランドの医療(メディカル ケア)
国民皆保険制度はありませんが、2001年(タクシン政権)から30バーツ(現在無料)で*医療サービスが受けられるようになりました。
*タイ国民医療保障(USC ユニバーサル カバレッジ):高齢者の8割以上が利用しているが、受診は居住地により医療機関が決められている。
(その他の公的保障はSSS被雇用者、CSMBS公務員です)
しかし、前述の通りタイ全体の医師・看護師が少なく(人口比)、首都圏偏在のため地方の公立医療機関は大混雑し、長時間待ち・短時間診察です。時々訪問するバンコク郊外の大手病院でもこのように混雑する待合室と隣の保険診療待合室との患者数の差にはビックリします。
なおタイ国民の死因順位はがん、心臓病、脳卒中、肺炎、交通事故、COPD、AIDS、糖尿病で、交通事故とAIDSが目立ちます。交通事故はアジアの中で特に多く(人口比)、WHOは世界第2位と報告しています。筆者が支援している「タイ身障者スポーツ振興財団設立」で知ったことは「タイの身障者は先天的な障害よりも交通事故に起因する人が多い」ことです。タイ病院ではリハビリは重要な医療科目です。
タイランドの介護(ナーシング ケア)
介護保険制度は未導入で社会的介護(公助)ではない。ただし家族・親族、地域・寺院などの自助・共助が伝統のタイランドでも急速な高齢・少子で変化が起きている。筆者は10年以上バンコクの老人病院の高齢者施設、チェンマイ(キリスト教)の外国人対象ホーム、北部の在宅介護(有料ボランティア)、JCI認定病院の高額な高齢者介護室、バンコク郊外の低廉老人施設などを訪問。
また日本が2000年に介護保険を導入した以後2003年には介護保険先進国・豪州のパースの高齢者施設の研修に参加しました。
なお、タイ介護については医療と違って公的資格(介護士)もなく、信頼できる情報や統計が少ないので、以下の報告には誤りがあるかと思います。
1.ナーシング ホーム
施設でスタッフやナースエイドによる見守りや介護サービスを提供する。約7千の施設があると言われますが、登録は800程度です。首都圏と地方大都市(コーラート・チェンマイ・コーンケンなど)に集中しており、経営・運営は看護師や非医療関係者が多い。今後はさらに増加が予想されます。日本では4万超の施設があります。
介護サービスは 首都圏で月滞在費(食事込)2万バ―ツ未満と2.5万バーツ以上では格差があり、6万バーツのクラスは居室・サービスとも高レベルです。
2.長期滞在者へのケア施設
リゾート施設やロングステイ村などジムやプール、公園や運動場などの広い土地の中で介護や医療サービスまで提供する。医師や看護師も駐在するので安心・安全を訴求している。
パタヤ・チェンマイ・プーケット・カオヤイ(国立公園)などの施設から、日本人長期滞在を歓迎する申し入れがあり、現地視察しました。平均的年金受給者には滞在費用が高い。
3. 在宅・訪問ケア
高齢者の自宅に派遣したスタッフが介護サービスを提供する。タイ高齢者の9割以上が老後は自宅での生活を希望しており、タイ伝統や生活文化に合致している。しかし介護士の確保・教育・管理と被介護士との友好関係維持が難しい。
* タイ北部の日本人滞在者が介護士を雇い、良好な関係により快適な生活をしている事例が多い。
健康維持・アンチエイジング
タイ高齢者の平均寿命アップにより、健康寿命の長期化が求められています。
(日本の平均寿命と健康寿命の差は 約10年である)
健康維持や予防医療の需要拡大で、大手病院は外来・入院患者以外の来院者も囲い込むため「ウエルネス センター」を充実している。最新の医療技術・ノウハウと専門医師・看護師・各種療法士・薬剤師・栄養士等によるチーム活動を志向している。
以上の報告は個人的ボランティア活動で収集した情報で、断片的で誤謬もあると思います。皆様からのご指摘や正しい情報提供をお願い致します。
2020年2月25日
日タイ ロングステイ交流協会
理事 事務局長 上東野幸男