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日タイロングステイ交流協会

チェンマイ最新レポート

2014年12月02日(火)

日タイロングステイ交流協会 事務局長 上東野幸男 (14-11)

 

ロングステイヤーのタイランド王国イメージ

 11月からタイランド王国(以下通称の「タイ」=タイランド人、タイランド語)は乾季の観光シーズンである。まず タイ最大級のお祭りである「ローイ・クラトン(灯篭流し)」に「スリンの象祭り」が続く。しかし昨年からの長期街頭占拠デモ(バンコク)と5月のクーデター以来の戒厳令下で、観光客は激減している(日本人は今年前半で前年比21%減)。

 タイ騒乱のマスコミ報道がなくなったので、ロングステイ(以下LS)の相談内容は年前半の治安・政情問題から最近はビザ・保険・留学・就活などに戻った。しかし多くの日本人は「選挙を拒否するクーデターや軍事政権によって政情安定・経済回復ができるのか?」と疑問視している。

 また 昨今大きく報道される香港のデモと比較すると、「普通選挙実施」という香港学生の訴えは誰もが理解できるが、選挙をせずに「(国王を戴く)タイ式民主主義」を発信するだけでは国際社会から理解されず、タイ・パッシング(無視)が懸念される。私は賢帝ラーマ9世を子供の時に知った。父のタイの友人が我家に来られた時、お土産の切手を頂いてワクワクした。当時の国王の切手肖像は若々しかったが、今もあまり変らないのがタイらしい。

 多数の死者が出た1992年の軍と民衆との衝突「5月の虐殺」の時の国王裁定を目の当たりにした時は感銘を受けたが、ご在位68年の今は時代との解離を感じる。

 

日本人のタイ北部LSの状況

 少子・超高齢社会と大災害により、日本人の海外LSへの関心は拡大し、目的・内容が変化してきた。LS希望国・地域は圧倒的・長期1位のマレーシア、2位タイが定着し、「安・近・暖」の東南アジアの高い人気が続いている。タイの在留邦人(3か月以上・届出)は59千人(2013年)、この内LS者は約9千人で、バンコク周辺とタイ北部が多い。チェンマイ総領事館管轄の北部9県の在留邦人は約4千人だが、LS者の比率が高く、未届者を含めて3千人程度と推定できる。

 チェンマイ県の人口はタイ第5位の170万人で、城壁と堀で囲まれた正方形の旧市内を中心に発展してきた。県の在留邦人数は約31百人(男性21百・女性10百)でタイ全体の伸び率より高い。総領事館はLS者にもキメ細かく対応しており、CLL(チェンマイ・ロングステイ・ライフ)・南国暮らしの会・チェンマイ福祉の会などの支援団体の活動も活発である。

 

チェンマイのLS環境の変化

 ラーンナー王国の都、チェンマイ(「新しい城都」の意、1296年誕生)には25年前から40回以上訪ねている。チェンマイ人の気質は、バンコクよりも率直・真面目・論理的であり好感を持てた。以来 異なった歴史・文化・気候風土の良さと共に安心感・居心地の良さを感じる場所になった。

 LSでは10年前「年金でもできる 海外ふたり暮らし タイ編」発刊のために長期滞在者を取材した。ここ数年、タイ女学生Rさん(チェンマイ大・バンコクのM大・琉球大学院で「チェンマイの日本人長期滞在者」を研究)を支援してきた。彼女の実証的データ分析の論文は毎年進化しており、今年はすべて日本語になり、お蔭様で今回の視察(体験ツアー)は事前に予習ができた。

 

改めてさまざまな留意点や要望を箇条書きにしてみる。

  • 1.体験ツアーの選択

① ベテランのLSアドバイザーが対応してくれるか。
② 現地のツアー会社やガイドのレベルはどうか。

  • 2.チェンマイ-日本のフライト

① これまではバンコクからチェンマイに行っていたので、日本発の今回は乗継ぎの不便さ・時間待ちの無駄を実感。
② 同行の方々や現地LS者も日本-チェンマイの直行飛行便を切望。

  • 3.健康・快適な生活の基本「住居」選び

① 日本人のチェンマイ滞在理由は、「物価が安い、気候が良い、住環境が良い」である。人気があるのは右頁地図のⒶニマンヘミンⒷファイケオ©チャーンプアックである。繁華街Ⓓチャンクランは初期滞在が中心。

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② サービスアパーメント(以下SA)を10カ所見学したが、多岐多様な日本人の生活スタイルに対応できる部屋が増えてきた。場所(環境・交通・利便)、施設(プール・ジム・IT)、部屋(面積・設備・備品)、契約条件(期間・サービス)などによる価格表があるのが良い。中級SAの相場はバンコクより安い(全国同一最低賃金以前はチェンマイ賃金はバンコクの84%)。

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今回視察したサービスアパートメントの全景。駐車場 はオ-トバイが多い

「見学した中級SAの面積別相場(1~3カ月)
   単位:バーツ(1B=3.3円)」
面積(㎡)     月額家賃(除 光熱費)
 30~40        9000~12000
 60~80        23000~24000
100~120        27000~28000

③ 障害者や高齢者対応のバリアフリー(手すり・柔らかい床)への配慮なし。今後増加する高齢者・要介護者のLSへの対策は必須である。

④ 日本女性が浴槽やIH調理器より要望する室内洗濯乾燥機(バンコクのSAにはある)も見当たらない。洗濯室(共用・有料)は不評である。

女性には不評の洗濯室(共用・有料)  

視察したチェンマイのサービスアパートにはなく、バンコ クの部屋にある「洗濯乾燥機」

 

 

 

 

 

 

⑤ コンドミニアムは所有すべきでない。
SAは外国人も購入できるが、外国人が相続するには法的制限があるため、住居は賃借にすべきである。

  • 4.食物の安全・安心状況は向上

市場(タラート)は整然・小奇麗である。日本人向けの食品スーパーでは、野菜類を5段階(オ―ガニック・無農薬・残量農薬なし・水耕栽培・その他)の色マークで表示していた。また新鮮な卵があり、生卵を食べ(られ)ないタイで「卵かけご飯」も可能になった。
註:国の食品安全認証はQマークである。

  • 5.医療・病院

タイは医療ツ―リズムを推進し、年間2百万人超の外国人患者を受け入れている。チェンマイにも日本語対応の総合病院がある。JCI認定のチェンマイ・ラム病院も医師百名以上で、日本語対応通訳4名。窓口に日本語表示もあり、安心できる。

チェンマイ ラム病院の窓口

チェンマイ ラム病院の窓口

 

  • 6.風土病への対策

日本で大騒ぎのデング熱やマラリアを媒介する蚊の駆除のため、空港から宿舎への途中で全員が殺蚊スプレイを購入。以前は必ず散布をして外出したが、今は都市化と建物の高気密化・エアコンの普及で使用機会は少なかった。
註:タイのデング熱関連患者は1~8月で23千人、死者23人(タイ保健省)。日本のヒトスジシマ蚊よりタイの熱帯シマ蚊のほうが毒性は強いため注意が必要。

 

上東野 幸男(かとうの ゆきお)

日タイ ロングステイ交流協会事務局長
ロングステイ財団政策審議委員
日タイ・ビジネスフォーラム運営委員
K & Y Research代表

ゴム関連会社(海外)勤務の父親の関係で、子供の時からタイ人・タイ王国と絆があった。三菱電機のタイ王国駐在時代は製造会社や販売会社の社長およびタイ財団理事長を務め、日本人バンコク商工会議所理事・電気部会長を歴任。タイ全県を訪問。現在は 日本人タイ・ロングステイヤーと両国のロングステイ事業者などの相談に対応、ロングステイ・セミナー講演を行っている。

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