タイ・コンドミニアム相続問題
2014年08月01日(金)
タイに住んでみると、日本人にとっては「なぜだ!」と思うことが多々ありますが、なんだかんだと言っているうちになんとかなってしまう…、本当に愛すべき国であり、愛すべき人たちなのです。だからタイが大好きなんです!(注:たまに、どうにもならないこともあります)。
皆さんはノンタブリー県をご存知でしょうか。バンコク中心地からは北西へ20キロほど、チャオプラヤー・エクスプレスボートなら終点まで約1時間ほどです。バンコクの隣にある県ですが、東京に対する町田市みたいな場所と言ったらイメージしやすいでしょうか。
そのノンタブリー県に日本から移住して約2年。「不思議だけど、愛すべきタイランド」、これが私のタイに対する印象の総まとめです。今後はこのテーマに沿って(少々幅広いテーマですけれど)、あちこち話が跳びながら、雑感を書かせていただきたいと思います。
“微笑みの国”と呼ばれるタイに住んでいると、東京などに比べて心和むシーンが圧倒的に多いと感じる一方で、「なぜだ!」と思わず叫びそうになる不思議なことも多々あります。
まず最初にご紹介したいエピソードは、私がタイに移住を決めた当初、最大の懸念事項であった「コンドミニアム相続問題」です。現在私が妻と一緒に住んでいるコンドミニアムは2000年の初めに購入したものです。諸般の事情により資金は同居予定だった母が出し、母名義にて購入しました(僕に金がなかっただけの話です…)。
2001年の初頭には移住を考えていたのですが、これも諸般の事情で何度も延期になり、2012年にやっと移住するまで12年間、毎年末年始の1~2ヶ月を母と我々夫婦の3人で、タイで過ごすことが恒例となっていました。そんな折、2011年に母が他界し、私がこのコンドミニアムを相続することになったのですが、そこで意外なタイの法律の壁に遭遇したのです。それは「外国人がコンドミニアムを相続する場合、相続から一年以内に物件をタイ人に売却しなければならない」という法律です。
ランドデパートメント(タイ土地局)に出向いて「なぜだ?」と(もちろん弁護士がですが)聞いても、役人は「とにかく1年以内に売らないと我々が代わって売り払うぞ!」とのこと。何度も交渉に出向き、「責任者を出せ!」と(もちろん弁護士が)言っても「誰に言っても同じだよ!」という高圧的な回答ばかりでした。
タイでは外国人が土地を買うことができませんし、コンドミニアムの場合でも一物件内の所有面積に制限があります。もちろん、その理由は理解できます。しかし、すでに所有しているものを相続後1年以内に売り払えという理由はさっぱり理解できませんし、想像もつきません。タイでコンドミニアムを所有している外国人はかなり多いと思いますが、おそらく外資系の不動産屋でもこの法律の存在を知っている人は少ないのではないでしょうか。ロングステイや移住をする人は、基本的に60歳代以上が多いのでしょうが、これではコンドミニアムを相続した伴侶、あるいは子供は途方に暮れてしまいますね。
起承転結の「承転」を端折って結論を言いますと、1年が過ぎても強制売却はされず(この辺のいい加減さも愛すべきところです…)、問題が発覚してから2年半が経過したある日、突然ランドデパートメントからシール付きの厳かな手紙が届きました。サッと読み下したところ(もちろん弁護士が)、なんと、「弁護士が提出した請願書の理由を正当と認め、コンドミニアムを売却せずともよろしい」という内容だったのです。私が依頼をしていた弁護士は若い3人組で、うち1人はかわいらしい学生みたいに若く見える女性なんですが、彼らは非常に優秀で、別の法律との矛盾点を指摘し、それを理由に法律の不適用を請願していたのです。
彼らの手腕も然ることながら、私は、実際には日・タイロングステイ交流協会が果たしてくれた役割が決定的に大きかったのだろうと推測しています。弁護士が指摘したポイントは正しかったにせよ、通常ならタイのお役所が法的解釈を真面目に検討して、意見を変えることなどなかろうと思うからです。しかも、弁護士も同協会も、正面から堂々とぶつかって交渉した結果なのです。もし、コンドミニアム相続に際して、同様の問題に直面した方がいらっしゃれば、解決ノウハウは同協会にあります。そして前述の超優秀な3人の弁護士がいます。どうぞご相談ください!
と、あっけなくエピソード1を終えて(法律問題は説明し出すと複雑なのです…)、次は「不思議だけど愛すべきタイランド」のエピソード2、「赤いナンバープレート問題」です。
タイのタクシーは、オンボロのトヨタ・カムリで高速道を140キロぐらいで飛ばします。高速道路といっても日本みたいに平坦な道路ではなく、ときどき凸凹のある道路上を本当にスッ飛んでいくので、後部座席のお客はずっと後部座席で体を硬直させながら、お尻が宙に浮くスリルに耐えなくてはなりません。(※不安になって、タイには行きたくないと言われると困るので補足しますと、すべてのタクシーがこうではありません。最近は安全運転のタクシー運転手も増えていますので、当たる確率はせいぜい50%ぐらいでしょう、笑)。でも安心してください。バンコク市内に住んでいればそれほど高速道路を通る機会はありませんし、一般道は交通渋滞でそんなには飛ばせませんから。
郊外に住んでいる私は、いっそのこと自分で運転する方がまだましだと思い、車を購入しました。タイで新車を購入した場合、まずは仮登録ということで赤いナンバープレートをもらいます。数ヶ月後に本登録が終わると通常の白いプレートになるのですが、この赤いナンバープレートには摩訶不思議なルールがあったのです。それは、「赤いナンバープレートの期間は、朝6時から夕方6時までしか運転してはいけない」という法律です。
運転免許証取りたての初心者ドライバー向けルールならまだ分かります。でも、新車を買っただけで…、思わず「なぜだ~!」と叫びたくなります。これには深い理由があるのかもしれませんが、誰に尋ねても未だにわかりません。実際には、夜中でも早朝でも、平気で赤ナンバーが走っていますし、お巡りさんも止めたりはしません。(重ねて申し上げますが)このいい加減さがタイの愛すべきところではありますが…。ではまた。コープクンクラップ!

購入した新車(赤ナンバー)と記念撮影
雨宮 健(あめみや けん)
日タイロングステイ交流協会会員。1947年生まれ。商社を早期退職したあと15年間、映画の字幕翻訳とそれを教える仕事に従事。2012年10月にバンコクの郊外ノンタブリー県に移住。現在は1割の字幕翻訳の仕事と9割の引退生活を満喫している。